野口 高志 株式会社ダックビル / CEO
ダックビルCEOです。若かった時に放漫経営で上場目指していた会社を倒産させてしまいました。皆さんのお情けをいただいて、もういちど頑張ってやり直してきました。懺悔の気持ちと感謝の思いを込めて社会課題を今後もコツコツと解決していくなかで社会に少しでも多く貢献していきたいな、と願っています。
私は27歳の時に起業しました。それなりに大きな会社に育ったのですが44歳の時に倒産しました。その17年間、休息を取った記憶がありません。仕事が取れない、集金ができない、支払いができない、給料が払えない、お金も借りられない・集まらない。お金の心配ってたくさんあって、心臓にもすごく悪いです。
求人に応募がない、社員からのクレームが多い、社員がすぐやめる。人の心配も多岐に渡ります。これに加え事故や不祥事も発生しますし場合によっては訴訟に発展することもあります。会社が大きくなると社会活動にも参加しないといけないことも多々ありますが若い時は勝手がわからず、恥ばかりかいて自分で自分のことが嫌になります。
44歳までかかって懸命に育てた会社は、あっという間に倒産しました。倒産したあと17年ぶりにやっと休むことができました。自己破産したあとはコロッケを買うお金にも困るぐらいでしたけれど経営の金策と比べると個人にお金がないことなど些細な辛さで、笑えてくるぐらいでした。ようやく休めた自分の体と心は金属でできているかのように重く、固かったことを今でも鮮明に覚えています。
1年ほど休んで心身を整えてから、再起しました。沈む反省の日々をおくるなかで、運動や寝ることの大切さ、人の暖かさ、食事の大事さ、自分を信じることの重要さ……多くのことに気がつきました。とことん反省した後だからいまは、楽しんで笑っていられる範囲で経営しています。当時は多くの方にご迷惑をおかけして本当にすみませんでした。心から反省しています。でも倒産から学んだ経験はいま、得難い経営ノウハウになりました。
昔はたくさんテレビや新聞・雑誌の取材を受けたり、講演なんかもしていました。何もわかっていないのに偉そうにわかったような顔をして話していました。それが求められていたことで、演じることに精一杯でした。振り返ると倒れそうなぐらいの背伸びをしていた自分を思い出して泣きそうになります。
失敗し、恐れに震え、反省のなかで理解した「経営者に必要なスキル」
それは「耐える力」です。
具体的に説明すると「お金はケチる。人の話はしっかり聞く。威張らない。背伸びしない。自己顕示欲を抑え、謙虚に課題に向き合い試練にじっくり耐えぬく」力が経営者に必要なスキルです。耐えるのが嫌だから、背伸びして威圧して1発逆転を狙うような、そんな経営者になってはいけません。下手すると自分だけではなく、大切な人たちも傷つけることになります。
これから独立してスタートアップに挑戦する人たちに伝えたいことがあります。
「挑戦」には必ず「失敗」がつきものであることを。
「失敗」を乗り越えるために必要なスキルは「耐える」ことであることを。
耐えるのがいやだから会社をやめて独立する。という甘い考えなら、起業しても高い確率で失敗して終わるだけだということを。
大切な人生です。経営を志すなら、甘言に騙されることなく、「自由と挑戦」ではなく「努力と耐える力」が自分に備わっているかどうか自分自身によく尋ねてみてください。
一筆啓上いたします。
「鳴かぬなら、鳴くまで待とう、ホドホドに。」