野口 高志 株式会社ダックビル / CEO
ダックビルCEOです。若かった時に放漫経営で上場目指していた会社を倒産させてしまいました。皆さんのお情けをいただいて、もういちど頑張ってやり直してきました。懺悔の気持ちと感謝の思いを込めて社会課題を今後もコツコツと解決していくなかで社会に少しでも多く貢献していきたいな、と願っています。
環境に良い夢の車と騒がれたEV自動車、どうも昨今は旗色が悪い。
やれ寒い時は使えない、充電スタンドがないから長距離移動はできない、
送電ロスを考えればエネルギー効率が悪い、バッテリー廃棄に大きなコストがかかる。
最悪なのは価格があまりにも高い。高すぎるから税金で補助して販売促進しているという…
ダックビルはEV充電器を開発販売している会社だから社用車はEV自動車です。
だから、わかります。上で言われているような数々の都合悪い指摘は本当です。
内燃エンジンがついた自動車と比較するとそりゃーもう間違いなくEV自動車は不便です。
欧米はちょっと反省モードです。EVに対する補助金を削減したり、EV車普及促進の目標数値を当初より緩和しています。
EVから内燃エンジンへ、揺り戻しの動きは凄ましい。EVに舵を切らなかったトヨタの過去最高利益をみてもそれがわかります。
EVは世の中で喧伝されるほどには普及していません。世界平均で14%、日本では3%にとどまります。
では、やっぱり内燃エンジンの時代に戻るのか。と問われると、私は戻らないと思っています。
実はハイブリッドの方が環境に優しく、ガソリン車の方が壊れなく安上がりだとしても、です。
なぜかというと「静か」だから。
大好きな音楽家、坂本龍一。
教授の愛称で知られる坂本龍一は世界に誇る日本の音楽家です。彼は生前エンジン音をとても嫌っていました。
晩年に教授が本当に憎そうにエンジン音の話をしていたのをみて、私は強いショックを受けました。
それまでは五月蝿い排気音と唸るエンジン音が大好きでした。でも、教授の話を聞いてから考え方がガラッと変わりました。
最近はまるで森林の中にネオン看板があるような、そんな違和感を車のエンジン音に感じるようになりました。
年齢も50歳をこえ、趣味が「自転車と犬との散歩、あと筋トレ」になると、
承認欲求が所有物で満たされることはかなり少なくなります。
自分の価値と自分が所有している「モノ」の価値はなんの関係もないんだ、と感じるようになってくる。
そういう年齢になると、自己顕示欲の塊のような五月蝿いエンジン音に怯える愛犬をみていると、やるせない気持ちになる。
周りに恐怖を与えて自己顕示欲を満たして幸せなんだろうか、と運転手の人格に疑問すら感じる。
そして、無音で走り抜けるEVを見ると、好感をもって見てしまう。
音はなくても「絵」になるな、って感じます。
EVを所有する喜びって、それです。
自己顕示欲の矛先が「モノ」ではなく、「ココロ」なんです、EVって。
いいモノをもっている俺、すごいだろ! じゃなくて、
人に優しくしたい俺、いいよね? これですEVがかっこいいのって。
二酸化炭素が増えることが地球環境を悪くすることなのかどうか、私にはわかりませんが、
エンジン音が生活環境を悪くしていることは肌でわかります。
介護が必要な高齢者が多くなり、少ない子どもたちを大切にしないといけない社会において、
車が撒き散らすガラの悪い音と、臭い排気ガスはもう、いらないと思う。
EVがもたらすべき変化は二酸化炭素の削減ではない。自己顕示欲の削減なんだろうと思う。
そしてモノへの自己顕示欲減退は、長い目でみれば地球資源の抑制につながる変化だと信じてます。
やっぱり私はEVを普及促進するために頑張りたいと思う。